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1967年東京生まれ。コラムニスト・編集者。企画会社タクト・プランニング代表取締役社長。編集者をつとめた後、独立。若者、女性、食、旅など、様々なテーマの企画や執筆、講演を手がける。2006年に名付けた「草食男子」は、2009年流行語大賞トップテンに。著書は、『考えすぎない生き方』(中経出版)、『自分をすり減らさないための人間関係メンテナンス術』『草食男子世代――平成男子図鑑』(いずれも光文社)など。 |
1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学大学院客員教授等を経る。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門は女性学、ジェンダー研究。著書は、『男おひとりさま道』『おひとりさまの老後』(いずれも法研)のほか、『家族を超える社会学』(新曜社)、『戦後日本スタディーズ』(紀伊國屋書店)など、共著も多数。新刊にエッセイ集『ひとりの午後に』(NHK出版)がある。 |
1946年岐阜県生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室を経て1995年に原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ドメスティック・バイオレンス、子どもの虐待などに悩む本人やその家族へのカウンセリングを行っている。著書は、『タフラブという快刀』(梧桐書院)、『選ばれる男たち』(講談社)、『共依存・からめとる愛』(朝日新聞出版)、『母が重くてたまらない――墓守娘の嘆き』(春秋社)ほか多数。上野千鶴子との共著に『結婚帝国 女の岐れ道』(講談社)がある。ウェブ春秋にて「さらば、『墓守娘』」連載中。 (http://www.shunjusha.co.jp/) |
(2010年3月9日、春秋社、紀伊國屋書店共催「第66回 紀伊國屋サザンセミナー」を収録) |
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深澤
『女はオキテでできている』(春秋社)という本を出しました。上野千鶴子さんと信田さよ子さんにお越しいただきました。
上野
この本は、目指せ、売り上げ何部?
深澤
同じ春秋社でも、信田さよ子さんの『母が重くてたまらない−−墓守娘の嘆き』は、何と4万部だそうですので、そのくらいを目指します。
上野
75万部。でもミリオンに届かないの。
深澤
自慢(笑)!
上野
ところで、この本の前に、『平成男子図鑑』(日経BP社、のちに『草食男子世代 平成男子図鑑』光文社知恵の森文庫)がありますね。
深澤
はい。「草食男子」という言葉が去年、流行語大賞のトップテンに入りましたが、それはこの本から出ました。
上野
『平成男子図鑑』は、男も女も読むでしょう。でも、『女はオキテでできている』は、ほぼ男は買わないでしょ?
深澤
そんなことないでしょう。(会場を見渡して)男性も来てますよね?
上野
私は、これは女性が読む本だと思った。女は自分にしか興味がないから、このタイトルはなるほど、と思いました。『女はオキテでできている』の「オキテ」を、「ルール」とか「記号」に置き換えてみると、ポスト構造主義のジュディス・バトラーのジェンダー理論通りになります。要するに、一生、「女装」で通したら、そのひとが「女」だというわけね。
深澤
信田さん、いかがでしょう。
信田
私、本に出てくる芸能人や芸人の名前が全部わかることが、すごく嬉しくって(笑)。安室の交際相手まで書いてあって、感動しちゃった。
深澤
最新情報満載です。
信田
一番最後がなかなかよかったですね。「持つべきものは目標と妄想」。
深澤
女の人は夢とか希望を持ちがちですが、私は持たない派です。持つなら、目の前にあるとりあえずの目標。たとえばゴミを捨てるとか、電球を換えるとかいった実現可能な目標です。それから、「3億円当たったらどうしよう」くらいの妄想。そのふたつで生きていくと、女はオキテから楽になれると思います。
信田
「趣味」っていう言葉もよく出てきますね。女らしさは趣味でいいというようなことが書かれていました。趣味、目標、妄想の3点は、カウンセリングにも使えるなあと思いながら、読みました。妄想といえば、私の場合、「日替わり妄想」なの。
深澤
信田さん、前はヨン様だったけど、この間ははんにゃでしたよね。写真集も買ったでしょ(笑)。
信田
ハマる対象がどんどん変わっていって、年々そのスピードが早くなっている。これ、どういうことなんだろう?
上野
きっとメモリーがどんどん減っているんですよ(笑)。
深澤
別件で会ったときに話を聞くんです。基本的に覗き見体質なんですよ。大好きですね、人の話を盗み聞きするのが。 私は編集者を20年やってわかったんですが、ものを書いたり発言する人って、多くが「社会音痴」か「人間音痴」だと思うんですよ。私の場合は、「女音痴」です。女がわからないことが怖くてたまらないんですよ。おふたりもそれぞれに音痴だからこそ、やれているんですよね。
上野
『女はオキテでできている』は、あなたの異文化探検だなって思いました。
深澤
そうです。私は「女という国」の留学生。いっそ「男の友達しかいないんです」って「サバサバ」といえれば楽だけど、もちろん男のこともわからない。
信田
でも、わからないからこそ生きていることが楽しいんでしょう? 毎日、発見があるのは良くない? やっぱり私の妄想ですか?
深澤
わからないことに気がつかなければ楽しいかもしれませんが、私はわからないということが明確にわかってしまうから、生きにくいです。ドキドキします、女の人としゃべっていても。私は音痴として、女性の世界を探検し続ける。 |
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深澤
おふたりは男性についても発言されています。上野さん、『男おひとりさま道』はいくら売れました?
上野
どれだけだと思う? うふふ、11万。でも、書店のカウンターにこの本を持っていく割合が、男6:女4で、これは良くないサインなの。女が買わないと爆発的なベストセラーにはならないっていう経験則がありますから。
深澤
11万部も売れていて、そういうこというの、やめていただいていいかしら(笑)。『男おひとりさま道』(法研)も75万部売る気だったんですか。
上野
救われたい男がもっとたくさんいると思ったの。
深澤
ところで、信田さんの、『選ばれる男たち』(講談社現代新書)という本――これは信田さんの妄想大爆発の傑作なので是非読んでいただきたいですが――のタイトルは、男は選ぶ立場だったのが、今は選ばれるようになったということを示していると思います。こういうタイトルが出てくるということは、信田さんの中に自分は選ぶ側だという意識があるからですよね。20年前だったら衝撃なタイトルだったと思います。
信田
おかしかったのは、題名にひかれて買った男性が随分いたことです。「僕のことかな」って(笑)。ところが、読んでいくうちにDVの話が出てくる。そこで読むのをやめるんですよ。
上野
勘違いの読者も、大切な読者です。私が『女遊び』(学陽書房)っていう本を出したら、男性に売れました。私の男の友人が一膳めしやで本を開いて読んでたら、ガテン系のおニイちゃんに「おお、『女遊び』か、ええ本読んどるなあ」っていわれたそうです。
信田
上野さんの戦略ですね。『スカートの下の劇場』(河出文庫)も意味深だし。
深澤
いや、単純に上野さんはシモネタが好きなだけですよ(笑)。上野千鶴子が「戦略」っていい出したら、大体やりたくてやってるだけと思っていただければ間違いない。上野千鶴子にひとり勝ちさせちゃだめなんですよ。ちょっと神格化され過ぎています。
上野
とんでもない。ミリオンセラーにならない人はマイナーです。やっぱり、瀬戸内寂聴さんくらい売らなくちゃね。
深澤
瀬戸内寂聴が射程に入っているなんて図々しい! まるめて下さい、今すぐ頭を(笑)。
上野
いよいよ売れなくなったらその方向に切り換えますんでよろしく(笑)。
深澤
しかし、上野さん、『男おひとりさま道』で男市場も取り込んでいきましたね。
上野
そうなの。このあいだ、70代男性の読者から「上野千鶴子は男の敵だと思っていましたが、認識を改めました」っていうお手紙をもらっちゃった。
信田
でも、上野さんって苦労が多いと思うよ。
深澤
みんな大変だよね、そんなこと言ったら。私たち3人の本は男の神経を逆なですることのみ(笑)。男の尾っぽを……いや尾っぽくらいならいいです。尾っぽなら可愛がられるんですよね。ところが私、最近「本体」を踏むようになっちゃったらしくて、本当に嫌われる。私が草食男子を語る際、批判の内容というのが、「おばさんで、バブル世代で、そのご面相で、男の恋愛について語るな」っていうのがほとんどなんです。内容を叩かれるのであれば物書きとしてありがたいんですけど、私の女性としての属性への批判のほとんどでした。
上野
その人たち、あなたの印税に貢献していないんでしょう? 無視したらいいじゃないですか。お客様だけが神様。
深澤
あの、結局、最初から最後までお金の話なんですね(笑)。 |
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深澤
上野さんは、アラフォー女性に向けて『おひとりさまマガジン』(文藝春秋)を出していますね。
上野
『おひとりさまの老後』は高齢者向けに書き過ぎたもんで、もうちょっと若向けに作ったのが、『おひとりさまマガジン』です。日本最強の負け犬トリオ、酒井順子、香山リカ、上野千鶴子が鼎談をしているんですが、ひとつ意見が一致したことがありました。それは、「家に帰って電気が灯ってないとホッとするよね」っていうこと。これがおひとりさまの共通点。
深澤
正しいおひとりさまですね。
上野
この間、アラフォーのモニター8人で座談会やってもらったんです。そのとき、驚くことがありました。全員、外資に勤めていたり安定した仕事があって、給料も高くって、そのうえ、秘境ツアーに行ったり、海外でパラセイリングしたり、ダイナミックな趣味を持っていました。親にパラサイトしている割合も高かったです。その人たちに、「アラフォーおひとりさまって、これから先、結婚で自分の人生がリセットするとは思わない人たちですよね?」って聞いたら、全員が「いいえ」っていったの!すごいカルチャーショックだった。
深澤
私はそのことに驚いた上野さんに、驚いた(笑)。
上野
ショックからまだ立ち直れない。つくづく思うんですけど、今の40歳って、社会年齢は7掛けして、28歳くらいじゃないかしら。
深澤
でも、ご自分が40歳の時も、そんなに大人じゃなかったとは思いませんか? あとになってからいうんです、こういう人たちは。
上野
だから、こうやってどんどん過去を忘れられるのが、生き延びる秘訣なんです(笑)。
深澤
だいたい、団塊の世代がバブル世代と同じくらい大人になれていないはずなんだから、そんなこといわれる筋合いはない。結婚でリセットできると思うのは、女性の基本姿勢です。上野さんのまわりには当時からいなかったかもしれないけど、団塊の女性だってそう思ってたはずです。あなたたちが世間知らずでそういう友達がいなかっただけ!
上野
いえいえ。団塊の女性はアラフォーで子育てを終わっていましたよ。結婚妄想からはもう醒めていました。それじゃあ、信田さんに、カウンセリングルームに現れる女性たちがどうかっていう話をしてもらいましょう。
信田
結婚は人生をリセットしますよ、不幸のほうに(笑)。「結婚したら幸せになる」という幻想が大きい分、現実に直面すると不幸のほうに向かいます。一度やってみるのはいいと思いますけど、抜けられないと困りますねえ。いつでも抜けられるように、ちゃんと保障をつくっておけばいいと思います。
深澤
その保障って?
信田
やっぱり、経済力じゃないですか。カウンセリングを通していろいろやってみたけれど、たとえばクライエントはDVにあっていたり、本当に不幸な事例が多い。そうすると、どうしてもお金の力が大きいと思うんですよ。
上野
もともと経済力があるんだったら、それを手放してまで、まずいものをわざわざ食って「まずかった」って発見しなくてもよさそうなものですけど。
信田
いや、それでも結婚でリセットできると思ってるんですよ。いまだにそう思う人がいなくならないことが、『女はオキテでできている』を読んでもわかった。
深澤
私は女性誌で取材を受けたり、取材することがあります。その機会に編集者やライターの女性に「自分の人生に、オイルダラーと結婚して人生が変わる可能性がちょっとでもあると思う?」と聞くと、45歳くらいまでは「ある」っておっしゃるんですよ。 上野
それは妄想系ね。 深澤
逆にもしかしたらホームレスになるかもしれないとも思う?って聞くと、これも45歳くらいまでは「思う」と言う。今の女の人が大変なのは、「ホームレス」1%、「オイルダラーの妻」1%、そして、そのあいだの98%を生きる辛さがあるということ。女性の生き方の選択肢は増えているし、ロングテール化しているのは確かです。だって、おふたりの世代はたぶん、「オイルダラーと結婚する」から「ホームレス」の間までの選択肢は、無かったと思いますもん。
信田
正規分布の真ん中あたりに線をひいて、そこに最も素晴らしい幸福があると信じた世代です、私たちは。
深澤
団塊はそうだと思う。おふたりは、そこから外れたわけですね(笑)。
信田
いや、私、外れてないですよ。結婚して子どもを2人育てました。
上野
ほら、勝ち犬と負け犬の差がこうやって出るでしょう(笑)。でも、子ども2人だなんて。一度の失敗に懲りなかったんですね。
信田
1人産んだら2人も同じと思ったんですよ。バブルの頃は私にとって閉ざされた時代だったので、当時のことがあんまり記憶にない。育児も家事も仕事もして、ストレス性の喘息にもなりました。
上野
さよ子ぉ、そんなに不幸だったのかい? よく生き延びて来ましたね。
信田
そういってもらえて嬉しいです。
深澤
おふたりの時代は、本当に大変だったと思います。女性の人生の選択肢が、上野さんと信田さんの世代は10。私の世代だったら100。それが、若い人では10000くらいある。けれど今の若い方にしたら、選択肢が多いのは辛いことなんですよね。選択を間違えたらえらいことになるんじゃないか、って思ってしまうのはすごくよくわかる。それでも、選べなかった20年前よりはよくなっている。そのことをちゃんといっておきたいです。
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深澤
さて、女性にとっての「家」「家族」についてうかがいたいのですが、信田さんがお書きになった本といえば、世の娘に衝撃を与えた『母が重くてたまらない−−墓守娘の嘆き』があります。私も『女はオキテでできている』で書きましたけれども(「長女女」「家女」参照)、家を守るべきかどうかという問題が、女性にとって大きな苦しみのひとつになりつつあります。『母が重くてたまらない』だなんて、非常に恐ろしいタイトルですが、内容はもっと恐ろしい。
信田
私、全然、恐ろしいとは思ってないんですよ。あたり前のことを題名にして何が怖いんだ?っていう感じで。どれだけ私がナイーブかとつくづく思いました(笑)。
上野
「墓守娘」なんていう古い言葉を今どきタイトルに付けて、随分アナクロだなあと最初は思ったけど、逆にいうと、娘が墓守役を背負うのは今だから生じた現象ですね。一昔前の女は墓守役はやらずにすみましたから。女はいずれは他家のひと、で、墓は男が背負うものでしたから。結婚してもしなくても、一生親から逃げられない娘は、最近の産物ですね。
深澤
なかなかのモダンホラーですね。
信田
母親については、私は、団塊の世代が鍵を握っている気がします。自分と同世代なので一番よく見えるんですが、この世代の親はなかなかなもんです。70年代にウーマンリブとかフェミニズムが活発になった世代として、社会の変化と共に歩んで来た。ところが、結婚してみて、正規分布の真ん中にあると思われた幸せが、全然、影も形も無かったっていうことが、わかってしまった。だからルサンチマンがある。
上野
90年代に、女性の学歴が急上昇しています。私も、(教鞭をとっている)東大の女子学生を見ていてはっきりくっきりわかるの。彼女たちには背後霊みたいに(団塊世代の)おっ母さんが憑いている。母親との二人三脚じゃないとここまで来れないのでしょう。その結果、摂食障害、拒食過食とか、娘はいろいろ葛藤を抱えている。おっ母さんの思いの丈がのし掛かっている状態が見えるようだったから、『母が重くてたまらない』を読んで、実によくわかりましたよ。
信田
草食系男子も、母の産物だという気がするんです。母が優しい「夢の男」を作ろうとしたその結果が、草食男子だと思います。子どもの問題でカウンセリングにいらっしゃる多くの母親がよくいいますもん、「うちの息子は優しいのよ」って。
上野
その裏には、「お父さんのようにだけはならないで」というメッセージがあるんですね。
信田
そうですね。それをカウンセリングルームでいうかいわないかは、人によりますが、言葉でいわなくても目線とか、しぐさでわかっちゃう。夫がそばに来たら、息を詰めたり、スッと避けたりするんですよ。夫がなにかいう時に不機嫌なオーラがバーッと漂っていたりして。そういう状況を見ている息子は、母の意図がわかりますよ。
上野
口にする期待より、口にしない期待の方がもっと怖いよね。
深澤
やっぱりホラーです。つまり団塊の世代の母親の恨みが、娘をコントロールし、息子を優しい男の子に育てた結果が、今の若者世代ということなんでしょうか。
上野
そうですね。簡単にいうと、『平成男子図鑑』と『女はオキテでできている』に出てくる若者になるんですよ。さらにちょっと屈折すると「墓守娘」。それが20年経つと、「女おひとりさま」になるんです。
深澤
信田さんは、草食男子については非常に懐疑的でいらっしゃいますよね。『選ばれる男たち』には、結局、草食男子も母親のコントロールによって生まれた存在で、結婚に絡め取られたとたん家父長的な男になるのではないか、というふうに書いていらっしゃいます。でも、私は、団塊やバブル世代よりは、草食男子に希望を見ているんです。
上野
オヤジをロールモデルにしないで育ってきた息子たちだから、私も、草食男子のほうがいいと思っています。草食男子って、女の微細なサインに敏感に反応する。セクハラ男は、逆にそこがわかんない鈍感男で、それに比べればずっとましよ。草食男子はセックスにがつがつしないっていうけど、セックスレスでどこが悪い。
信田
でも、父親をロールモデルにしないことの困難性ってありますよね。それは、どういうふうに解決されてきたんですか?
深澤
母親がロールモデルとしてある程度、機能します。でも、マザコンとは違います。マザコンは母であれば何でもいい。母が母である限り好きなんです。草食男子は、お母さんの良さが個別的にわかっている。「うちのオカンはここが面白い」という発想をもっていて、母親は尊敬する好きな先輩の一人という感じなんですよ。
上野
でも、「母を尊敬しています」っていう男を恋人にしたら女はやりにくいよなあ。
深澤
そうやって、すぐ草食男子を敵にする……。ちょっと草食男子の受け取られ方についていいたいんですが、草食男子はネガティブな方向でブレイクしました。「世の中が草食化したせいで、日本の経済が悪くなった」とかいう人もいるくらい、もう何でもかんでも犯人にされる。日本の2009年度の殺人認知件数は戦後最低です。若者の車のスピード違反による交通事故死も10年前の1/5以下に減ったんですが、「若者の草食化」でなんとなくなげかわしいという論調になりがちです。
上野
良いことばっかりじゃん。
深澤
でしょ? それなのに、新聞は「なんだかけしからん」っていう論調。殺人や交通事故を起こしても、男には肉食であってほしいんだな、新聞社のオヤジは。
上野
記事を書いているのがオヤジ世代だからでしょう。嘆かわしいと思ってるんだよね。
深澤
企業から頼まれる講演もそうです。私が草食男子の悪口を言ってくれると思って、講演の依頼をしてくれるんですけど、私がずーっとオヤジの悪口を言っているので、オヤジがしおしおになって帰ってく。そして、そのあと二度と呼ばれない。お金を貰っておきながら人をあんなにがっかりさせていいのか、と自分でも思いますが(笑)。
信田
フラワーチルドレンとか、いちご世代とか、今までもそういう流れはあった。それと草食男子が決定的に違うのは何なの?
深澤
モデルとする上の世代の男がいないことですね。
信田
例えばフロイトの精神分析や発達心理学では、いちおうモデルになる理論があることになっていますよね。父がモデルで、母と息子の密着を切り裂く存在だとか、世の中の規律を教える役割だ、というふうに。そういうものが何もないっていうことなんですか?
深澤
何もないわけではないけれど、そういう父の生き方をなぞったところでいいことがない。それは間違いないことなんです。
上野
フロイトさんは時代錯誤で間違ってました、っていう話ですね。
深澤
はい。それでも、「草食男子っていいじゃない」というのはまだ大変です。こんなに風当たりが強いなんて、びっくりしました。
信田
私、なんだか草食男子を応援したくなってきちゃった。
深澤
応援して(笑)!
上野
大学生にデートコースを聞いたら、週末に恋人と会って、一緒にスーパーに行って買い物して、アパートに帰ってまったり鍋をして、それからビデオ見て寝ようか、みたいな感じです。省エネ、省コスト。私、「茶飲み友達カップル」って呼んでいるんだけど、老人のみならず若者にも広がっているのは、いいことですね。私の理想ですわ。 |
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深澤
では、友達については、おふたりはどうしていますか? 私、この間つきあい20年あまりなのに初めて「ごはんを食べよう」と上野さんに誘われて、びっくりした。
上野
20年間、あなたを別世界の人だと思っていたのよ。友達を作るには、「あなたと一緒にいるのが楽しい」といって自分からすり寄って行くしかない。私は努力しています。
深澤
私は「斜めの人間関係」っていいと思います。上司や部下、親子のような縦の人間関係でもなく、同僚や友人のような横の人間関係でもなく、知人くらいの人間関係ですね。 女友達の間で大事なのは、まめにしないことだと思うんです。たとえば会ったら必ずメールするとか、ミクシィにコメント書いてあげるとか、ツイッターにつぶやき返すとか、お誕生日だから何をやってこれをやって……とか。そういうことをやっていると、それをやらなくなった瞬間に関係が悪くなります。やらなかったら、「これまでやってくれたのに」ってことになるんですよ。あえて無精にすることで、斜めの人間関係は維持できる。
信田
仕事じゃない人間関係はいいですね。私は友達作りに努力するほうじゃないけど、そういう関係は絶対なくさないようにしてます。
上野
利害関係がないことが一番。ポジションに寄って来る人は友達じゃない。だから同じ業界にお友達は求めない。職場に友達がいないなんて、あたり前じゃない?
深澤
そうですね。仕事場では恋愛より友情が御法度。めんどうくさいですよ、仕事で友情が発生すると。
信田
夫婦の場合は茶飲みができれば壊れない。一緒にお茶を飲めなくなったら危ないですね。妻が微妙に時間をずらして、夫がお風呂入っている時に、パッと台所へ行ってお茶飲んだりするような夫婦、意外といっぱいいるんですよ。
上野
ねえねえ、それでも夫婦をやってる理由って何?
信田
子どもが心配で離婚できないという人は多いです。鏡を見れば、顔にシミはあるし、お腹は出てるしで、最後に「売れるもの」がないとなれば、やっぱり躊躇する。経済力がないことも理由になっていますね。
深澤
結局、結婚って金なの?
上野
私、この仕事をしてわかったけれど、最後に行き着くところはお金。それが今の結論です。
信田
そう。冷徹なる現実ですよ。親子関係の問題だって最後は金に行き着くし。
上野
フロイトよりマルクスですね。
深澤
でも、「お金が結局すべてですよ」っていうことになったら、みんなカツマーになるしかないってことですか? 年収600万円を稼いで、自立していて、男の年収は1000万円以上で……という条件づくめになりませんか。
信田
そうじゃない、そうじゃない。そういうふうに短絡的にはいいません。つまり、家族のいろんな対立とか葛藤を突き詰めていくと、結局はお金になるっていうことです。どれだけ取るかですよ、相手から。
上野
それなら、「オイルダラー妻」が女の“あがり”になっちゃいますよね。
信田
でも、DVの問題って、最後は別れるか別れないかになります。別れるとしたら、これから生きていけるだけのお金をどうやって裁判でとるか……と、かなりぎりぎりのところをやるわけです。生きていくためにはお金がやっぱり必要。くだらない結論のように思えますけれど、現実です。 |
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深澤
『男おひとりさま道』に話がもどりますが、あの本には結局、「女に可愛がられる男になれ」っていうことがずっと書いてある気がする。
上野
それだけでもないのよ。最近つくづく思うの。人とつきあうのが面倒くさいという男は、ひとりで死んでもらえばいいじゃないかって。ひとりが好きだという男性は結構いるんで、それはそれでちょっかい出さなくてもいいかな、って思う。
深澤
わかります。ひとりで死ぬ満足、気楽さってあると思います。私なんか誰かがそばにいたら、きっと死の床でもサービスする気がする。「あなたがいてくれてよかった」とかなんとかいって、結局は、気を使って気持ちよく死ねないんじゃないかと。死ぬなら絶対ひとりがいいです。
上野
そのものズバリの例がありました。おひとりさまが10人住んでいる所で、ガンで死にゆく人を9人が順番に見守りました。あるとき、見守りしていた人が、「私たちのやりかた、どうですか。本当のお気持ちをお聞かせ下さい」て聞いたら、病人は何ていったと思う?「たまにはひとりにして下さい」って。
信田
私はみんなにさようならっていって死にたい。やっぱりだれかにいて欲しい。ほら『風と共に去りぬ』のメラニーの最後みたいな……。
深澤
メラニーと自分を一緒にしてるの? 瀬戸内寂聴とか、メラニーとか、君たちの脳はどうかしてるよ本当に(笑)!
上野
信田さん、大往生の臨終の席には孫が取り囲まなきゃダメなのよ。
信田
「ばあば」とか呼ばれたりするの、いいですねえ。「グランマ」でもいいな。どうやって呼ばせようかって今から考えている(笑)。夜明けに子どもをたたき起こしてよびつけて……。
深澤
迷惑(笑)!
上野
別にいいんですよ。迷惑かけずに死ぬなんて、おこがましいよ。自分の死体の始末なんか自分じゃできないのにね。
深澤
シモの世話はかけたくないけど、みんなに看取られたいっていうのが、多くの人の理想じゃないでしょうか。
上野
アラフォーの悩みで一番多いのは、「友達も恋人もいない。ひとりで暮らして来ましたが、これから先もこのままでいいんでしょうか」っていう質問。そんなとき私は、「OK、おひとりさまで大丈夫よ」っていいます。すでにその暮らしの実績があるから、不安なくやれますよって。
深澤
それはいいアドバイスですね。 |
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深澤
信田さんは、これからの女性はどう生きたらいいと思いますか。
信田
そういうことを考えたことないんですよね。
上野
カウンセリングルームでお金払った人にだけはお答えできるけど、ただでは言えないっていうわけですね。
信田
じゃいうわ! いいます、いいます(笑)。世の中にはびこっている通念や常識がいろいろなものを縛っていると思うんですよ。それに少しづつでもいいから戦って欲しい。私、戦わないとダメだと思う。難しいことですけれど。戦う相手は自分の中にある。自分が取り込んだ常識と戦って欲しいです。
上野
常識を「妄想」と読んだのが、おひとりさまです。これだけおひとりさまが増えたのは、もう妄想に生きない、男に期待するのは止めた。という人が増えた証拠です。
深澤
そうです。こういう本を書いておきながらいうのはなんですけど、それでも、今の時代は女性にとってだいぶましだと思います。おふたりが20代の時は本当に生きづらかったはずです。
上野
よくぞいってくれた。ここにいる若い人たちがちょっとでも生きやすくなったとしたらら、それは私たちの世代の女が闘ってきたおかげだからね。
深澤
私は生きやすくなりました、おふたりがいてくれたから。社会の常識と戦うんじゃなくて、尻っぽを踏んできただけですけれど、それでも20年前よりは楽です。生き方の選択肢があまりないなあ、これが許されないのはきついなあ、と思ったことも昔はたくさんありました。今が幸せとも思わないけど、ましにはなった。「女は今、大変なんだ」って思っている方は多いかもしれないけど、そこはぜひわかっていただきたい。 協力:紀伊國屋書店、紀伊國屋サザンシアター |
【書籍紹介】
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深澤真紀著 書籍詳細はこち ら |
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